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医療事故が刑事事件となる場合

19.04.19

 去る平成31年2月20日に、乳腺外科医の強制わいせつ被告事件について無罪判決が下されました。この件は医療事故ではありませんが、医師が逮捕された刑事事件ということで医療界の関心も大変に高いものでした。
 裁判には民事事件と刑事事件があることは、ご存知の方も多いと思います。医療事故に関する講演の場では刑事事件について質問を受けることも多く、現場の医療者、事務局の方において刑事事件に関心が高いことを実感します。 
 医療機関に落ち度のない事故であったとしても、医療事故で患者さんが亡くなった場合に警察が業務上過失致死罪(刑法211条)等に該当するのではないかとして、捜査を開始することはあり得ます。また、医療事故に遭った患者や、医療事故で死亡した患者のご遺族が警察への被害届や告訴などが行われることもあり得ます(一般の方にとっては、民事事件よりも刑事事件の方が、馴染みが深いといえます。)。医療を刑事事件とすることの是非には大いに議論がありますが、現実的には、医療機関の管理者、事務局として、医療事故が刑事事件にもなり得ることを想定して備えておく必要があります。
 捜査を開始された場合、医療機関の対応として、診療記録の提出等の捜査協力は行いつつも、医療に落ち度がないことについて意見書を提出するなどして、積極的に主張した方が良いでしょう。
 また、刑事事件では、特定の医師や看護師、スタッフが被疑者として捜査の対象となります。仮に医療に落ち度がなくとも、当該スタッフの精神的ショックは大きいものがあり、スタッフのケアも重要となるところです。
 いずれにしても、捜査機関への対応については、早急に医療に対する専門性を有する弁護士に相談する必要があります。当事務所としても、医療機関としての対応や、被疑者となったスタッフの弁護について対応しておりますので、ご相談をいただければと思います。

                                              名古屋丸の内本部事務所 渡邊 健司

異状死届出義務

19.03.08

 平成31年2月8日付「医政医発0208第3号 医師による異状死体の届出の徹底について(通知)」が厚生労働省医政局医より出されました。
当該通知では、「近年、『死体外表面に異常所見を認めない場合は、所轄警察署への届出が不要である』との解釈により、薬物中毒や熱中症による死亡等、外表面に異常所見を認めない死体について、所轄警察署への届出が適切になされないおそれがあるとの懸念が指摘されています。」とした上で、「医師が死体を検案するに当たっては、死体外表面に異常所見を認めない場合であっても、死体が発見されるに至ったいきさつ、死体発見場所、状況等諸般の事情を考慮し、異状を認める場合には、医師法第21条に基づき、所轄警察署に届け出ること。」とされています。
 このような通知が出された背景としては、最高裁平成16年4月13日判決において、「医師法21条にいう死体の『検案』とは、医師が死因等を判定するために死体の外表を検査することをいい」と判示されたことにより、死体の外表における異状の有無を基準にして異状死届出義務を判断する見解(いわゆる「外表異状説」)が主張されたことが考えられます。
 異状死体届出義務の趣旨は、上記最高裁平成16年4月13日判決でも指摘されているとおり、「警察官が犯罪捜査の端緒を得ることを容易にするほか、場合によっては、警察官が緊急に被害の拡大防止措置を講ずるなどして社会防衛を図ることを可能にするという役割を持った行政手続き上の義務」とされています。
 医療機関においては、今回の厚生労働省からの通知を踏まえ、異状死届出義務の有無を適切に判断する必要が求められます。異状死届出義務の判断については、医療過誤により死亡した場合はどう判断するのかも含め、法解釈が必要となります。
 当事務所には、医師法・医療法などの解釈も含め、医療に関連する法律問題を取り扱う部署がございます。異状死届出義務の有無の判断に迷われた場合には、当事務所の弁護士にご相談いただければと思います。

                                        名古屋丸の内本部事務所 弁護士 木 村 環 樹

「いいから薬をだして!」という訴え

19.02.19

 私事ですが、先月予防接種の甲斐なくインフルエンザにかかり、近医(内科)の受診をしました。医師の検査・処方が終わり、近くの薬局で調剤されるのを待っていましたが、別診療所(整形外科)の患者と思われる人は「なんでいつもの薬がないの!私には●●が効くの!」と訴え不穏な雰囲気でした。
 さて、多分に推測を含みますが、このような場合①処方薬の変更に関する医師が不十分だった②医師は変更を説明したが患者は納得していなかったなどの原因が考えられます。
 医師は、治療の必要性やメリット・デメリットを説明し、患者の同意を得て治療を行う義務がありますので、処方薬の変更について説明義務を負っていると考えられます。
一方で、十分な説明をしても患者が納得せず、適応の治療や薬剤にこだわる場合、患者の求める治療を拒絶して良いかは応召義務や自己決定権の問題となります。応召義務との関係では「正当な理由」があれば診療を拒否できるとされていますし、自己決定権は「適応のある治療を拒否する」という限りで有効ですが、適応のない治療を医師に強制する根拠にはなり得ず、結論的には治療を拒絶しても許されると考えます。
 このように、クレーム一つ取り上げてみても、その背景には複数の法律問題が関係しており、総合的な検討が必要になります。当事務所は、東海三県を中心に、医療機関からのご相談を受け付けておりますので「些細なことで・・・」と思わず、お気軽にご相談下さい。
                                           名古屋丸の内本部事務所 弁護士 米山健太

行政との折衝の重要性

19.01.22

 少し前に放送されたドラマ「半沢直樹」では、銀行に対する金融庁検査の様子が描かれていましたが、医療機関の場合、都道府県知事や保健所を設置する市、特別区の長による立入検査(いわゆる医療監視)があります。医療監視以外にも、新たに病院や診療所を開設する場合や、M&Aを行う場合、医療法人の定款を変更する場合、日常的な診療において医療法上の疑義が生じた場合等様々な場面で、行政と協議し、折衝する必要が生じます。
 ところが、実際の行政担当者との折衝の場面では、時として粗探しとしか思えないような指摘や、法令の形式論のみが振りかざされ、現場における具体的改善策が見えてこない指摘をされることも少なくありません。また、医療法の解釈も難しく、一義的ではない条文も多いため、曖昧な指導に対して医療機関側が対応に悩んでしまっているケースも見受けられました。
 行政と対立するのはよいことではありませんが、やはり監督を受ける医療機関の側でも言われたとおりそのまま従うだけではなく、法令の趣旨や根拠を検討し、行政の担当者に積極的に提案して、医療機関としてあるべき対応を模索していくべき場合もあると思われます。
 行政との折衝の場面では、弁護士に相談するというイメージがわかないかも知れません。弁護士は医療法の解釈や行政通達、判例等を根拠として、医療監視の準備や行政担当者との折衝についても助言をすることができますし、最悪の場合に、不利益な行政処分を受けてしまった場合には、処分の取消しを求めて裁判所に提訴することも可能です。
 当事務所では医療機関と行政の折衝が円滑に進むよう、検査の立会いや、法令の解釈に関する助言、折衝の方法に関する助言を積極的に行っていますので、お気軽にご相談をいただきたいと思います。
                                           名古屋丸の内本部事務所 弁護士 渡邊健司

カルテ記載の難しさ

18.12.17

 医師法24条第1項には「医師は、診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない。」と定められています。

 カルテを記載することの目的の1つに、患者情報を残すことで、患者情報をスタッフ間で共有し、適切な医療行為を行う検討資料とすることが挙げられます。

 患者の診察などで忙しい医療スタッフの方にとっては、カルテ記載を充実させる必要性は十分に認識しているものの、カルテ記載に多くの時間を割くことは現実的には困難なこともあるかとは思います。

 いかにして、効率よく、かつ、客観性の高いカルテ記載を目指して行くかということは医療機関のスタッフの方々にとっては重大な課題であると言えます。

 患者に対する説明義務との関係でも、医療行為に関する患者への説明内容をカルテに記載することが望まれます。また、医療事故が発生した場合には、経時的に事実を正確にカルテに記載しておくことが重要となります。

 カルテ記載に関するお悩みがございましたら、当事務所にお気軽にご相談いただければと思います。また、当事務所では、大学病院で院内弁護士として勤務した経験のある弁護士の視点から、カルテ記載のポイントなどにつき、医療法人、病院、診療所の各医療機関のスタッフの方々を対象とした講義(講演)も対応させていただいております。こちらにつきましても、ご興味をもたれましたらご連絡いただければ幸いです。

                                            名古屋丸の内事務所 弁護士 木村 環樹

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